2005年5月5日

元CIAの分析官が書いた「Imperial Hubris(帝国の驕り)」を読了しました。私の知り合いのドイツ外務省高官は、「米国にはヨーロッパに比べて、対テロ戦争のような問題について、発想の自由がなく、酒の席でのお互いの発言に聞き耳を立てあうなど、Denkverbot(考えることを禁止する)のような雰囲気がある」と語っていましたが、そうした雰囲気の中でこうした本を発表することは、かなり勇気が必要だったものと思われます。

特に米国がイスラエルを支援したり、サウジアラビアと友好関係を持ち続けたりすることに、堂々と疑問を呈していますが、いくら匿名とはいえ、ブッシュの再選後は筆者がCIAを辞めたことも理解できます。筆者によれば、アル・カイダは米国の民主主義や国民性を憎んでいるわけではなく、米国がサウジアラビアやイラク、アフガニスタンに軍を駐留させていることや、イスラエルを支援していること、つまり米国が行っていることを憎んでいます。

そして、アル・カイダの運動はテロリズムではなく、世界的なイスラム教徒の武装蜂起であり、アル・カイダを壊滅させ、ビン・ラディンを殺害しても、根源を絶つことはできないとしています。つまり、テロリズムを取り締まるような警察的な手法では、米国を初めとする西側諸国は、対テロ戦争で負けることが確実だというのです。また筆者は、有史以来外国軍による占領に抵抗してきたアフガニスタンの平定に、西側が成功することは絶対にありえないと断言しています。

イラクでは、数10人が死亡するような爆弾テロは、もう日常茶飯事になってしまいましたが、ちょうどソ連がアフガニスタンからすごすごと撤退したように、米国がイラクから引き揚げる日がやってくるのでしょうか。